真言宗豊山派



享保四年俳諧『田植塚』活字版


誹諧 田植塚 乾自序
誹諧 田植塚 乾

自序

尽せぬ浜の真砂の言の葉、風流まちまちにして、理屈の古ミを嫌へは、還て異言怪語の罪を遁 れす、たゝ故はせをの正風こそ尊けれと此道に造入事年あり、中頃尾の月空居士行脚のタ、予 か茅窓を訪ひ、五月雨のとくとくと、四華八月の古式を正し、風雅の正道を勧められて、けふの 心さしを養ふ捷径をしるより、全く他の異風にたしろかす、いよいよ其遺風を仰き奉り、野面の石の あるにまかせて、芭蕉翁の三字を彫る、そこは栗津の松原、これハ阿武の松の名もおかし、是を 後の世の記念と香華をさゝくれハ、伊達信夫の手向の句々墳前にかさなれり、鳴呼書きあつめた るもしほ草紙魚の巣となさむ事、その信にたかふ恐れあれは、一句のよし悪は、その施主にゆつ り、今梓にちりはめ田うへ塚と呼ふ、つゐておかしからねと、国々の達人松島象潟の行戻り、予 か亭の云捨または遠近の好士、同門の徳作、聞覚へたるまゝに、前後の弁えもなく、ならへて見 れは、終一帖とはなりぬ

 己亥夏 佐藤氏馬 耳 於攬翠軒書
 ○印
 □印

 田植塚記

ミちのく伊達桑折の里、朝日山法圓寺の田植塚は、はせを一とせ奥羽の抖薮に、風流のはしめ や奥の田うへ歌と事捨給ひし真跡を土中に埋んて、霊魂を祀る也けり、於呼馬耳子ハ丸額の むかしより風雅を好ミ、やゝふて付合の味をしるに随て、故翁の正風をしたひ、今の流行におくれ す、そこらの僧俗を駈立て、月々の興行をすゝめ、花紅葉の衾にふれては、一句の手向草に、誹 永く諧久しき事を祈る、さるは昌黎か?作りて其功徳を仰くの類ひにひとしきか、今年野僧か再遊 の杖をとらへて、供養の法席をひらき、これか記を乞ふ、其金鉄の厚心辞するに道なし、後の連 衆も耳子か信を続て、誹諧の邪路におちいらすんは、今日碑を建るの志にそ無かしと、おつおつ 筆を取て其大概を記すものならし

 享保四己亥五月十二日
 雲水 無外坊燕 説謹誌
 □印  □
2006年02月26日

追善興行ー人ー句
 追善興行ー人ー句
 燕説
風流の田うた揃えむ初手向
 稽主して咲ゆりの一族 乙角
楽焼に和巾がそへハ月澄て 古覧
 秋声の賦に似たる今晩 芝扇
黐しらぬ里やさかして渡鳥 衣吹
 否との辞義は餅か金子か 風走
馬上から小便たれる機嫌界 一水
 とつと?んた笠ハ何風   桜吟
飛岩に仲間懺悔のものかたり  闘角
 破籠ひらけハ日は申の刻  徇斎
はたはたと柿葉城をふミつふし 梅人
 こちらて啼けは八方も鵙 卜端
山姥か出るか出るかと暮の月 素弦
 鉞に腰かけてしハらく 渭流
当年は雪のかハりにめつた吹 素柳
 晴れたよ旅の煎薬 飛雲
一夜さに三世の花のつほミ初 馬耳
 細行川の凍も同国 竹雫
出代の娑婆とて白い鳶もなし 孤村
 笑ふてのける宗旨問対 蝶翠
娘さへ往ふと言は笹に風 岐山
 下着の伊達はうちあかりぬる 槽角
胼も京の水てハ割ぬやう 快遊
 夜から夜へお十夜の荒 紅玉
へんてつもないて豆腐ハ喰よけれ 柳巴
 芝居もめよに違格千万 布川
内々の公事はなかれて萩のかせ 梅雫
 松茸うゆる国分寺山 翠條
鹿聞に殿もいましやとタ月夜 湖柳
 借りた袴の裙は対丈 乙十
葬礼に泣手のないをうたてかり 奇云
 川へさんふと捨る明松 易耕
域付にから服よつて行々子 淇竹
 百のかすりて落ぬ入札 海尺
荘厳の華はいつれも二返ノ 東舟
 殊に日和も御忌の群集 不?
2006年02月26日

碑前手向
 碑前手向
天も感したりや供養の風凉し 院主 乙角
蛍かな石牌ノの底ひかり 前主 素柳

 五月十二日導師を請し 朝日山に 
 おゐて供養をいとなむ おのおの碑前に
 合爪して風雅安楽の華を捧け奉る

とふらひによれ芍薬の羅漢達    馬耳
奉るあやめに墓も動くへし    湖柳
其流汲んて手向むかきつはた    東舟
卯の花の道は明るしはかのまへ 保原 易耕
はいかいの百草取らん塚のうえ 同  奇云
萱草は手向の水に照れけり 同  乙十
荘厳にそよけ牡丹も芍薬も    素弦
此塚を古べこころか五月雨    闘角
人なさの手向は白し花卯木    徇斎
三拝のあたま撫るや若はせを    梅雫
暑日や勿論なから水向ん    飛雲
鶯や水鶏の跡の一鉦    孤村
卯の華の幕を絞るや此供養    柳巴
龍燈や万にくたけて飛ほたる 万正寺 坂凩
逆縁の朝日山なりほとときす    紅玉
蓮の葉もぬかつく寺やから手水 保原 可松
いつの世にこほれて墓の花あふひ    岐山
早乙女も笠脱て行け塚のまへ    交隣
一つかミ早苗そなへん田うへ塚    桜吟
凉しさや墓に青磁のおき香炉    布川
青麪の仏供や青き娑婆なから    一水
廻向して行か田うへの水初尾    淇風
こころさし細し手作の花あやめ    白桃
白雨の御伽を啼か墓の蝉    受月
其徳をあふけやはかの麒麟草 中野 花柳
若竹のふしや揃えむ三具足 福島 靡?
蓮の葉の糸は切らさし手向花 増田 淇竹
姥嫁々の手向似合し茶筅草 飯坂 海尺 
汲立の手向は凉し水の華 半田 好我
彼翁の道やしけりて今年竹 山形 魚学
夏の日も茶湯をさます事なかれ 瀬上 嘉峰
其功徳お経に何とふかみ草 同  義隣
蚊も千部蝿も千部か此手向 同  松岩
紫の雲を招くかかきつはた 同  等舟
五月雨これも手向に可也けり 白石 和市
施主札をつけぬ誠や白牡丹 掛田 苔雫
青すたれ捲や法事の休ミ所    如風
貰金のかさりや塚の金銀華    蝶翠
柄香炉の卓や蚊やりのタ気色    快遊
うち水の墓の奉行や手習子    ?之
山近き盛物赤し草いちこ    梅人
此塚の供養を触れよ郭公    柳緑
因縁の苔や石碑の花さかり    緑水
燈明を消すな消すなと水鶏哉    翠條
露なから手向んゆりの一うねり    竹雫
あら白し誰か手向の苔の花    浮白
ありかたき山や風雅の真昼顔    波燕
水にちかき墓に備ん鳶尾の花    渭流
さうさうの四方浄土や山若葉    ト端
風そよそよ手向こころか桜の実    風走
はつかしき村の手向や紅の花    芝扇
線香の匂ひに散や華あふち    古覧
捲あける蓮の風雅や去此不遠 仙台 指杏 
水や空まします星の凉しさよ 同  白英
ちの風を仰く日はあり今年竹 同  青雨
世を旅の泊り明るし苔の華 同  其流
来迎の西日粧ふやかきつはた 同  辰晁
ひさまつく袖に早苗の雫かな 同  露光
引水の恩や青田の一連衆 同  為閑
木も草も荘厳らしや入梅の空 同  旦柳
草苗かなその切を一つかみ 同  蒲帆
奉るこれや獅子座の白牡丹 同  勇徳
うけたまへ慕ふ手からの花あやめ 同  拾意
弔ひに逢ふて蓮の巻葉かな 福島 傾枝
風薫る木下にならへ昼念仏 同  友仙
其人の香や今もつて蓮の花 同  東湖
みちのくの風雅はひこれ瓜の花 同  下文
魂か石碑のうへのほとときす    衣吹

 この法事の拍子とりの一人にかとへられて
能縁にあふや斎日の初茄子   不?
2006年02月26日

春 部
 春 部

初午や温石捨ん恋ころも 岩城 露沾子
むしろにも寺役かかる彼岸哉 尾州 呑水
うくひすの声吐こむや水鏡 長崎 古道
さハるなと接木に伊勢の御祓 桑折 東舟
憎るゝ子やはゝかりて木瓜の花 同  不?
飛鳥井の沓にくたける椿哉 尾州 仙角
接木して三服四服や桃の華 月空 居士
青柳は風ほしさふに枝垂けり 筑前頓野 一定
出代や真帆にかた帆に後帯 白川 四タ
落ちかけて野馬を散す雲雀かな 同  百拙
勝公事を下手に組んて蛙かな 同  浴負
取たりの手はさまさまの燕かな 同  竹陰
鶯や汝おもへは曇る日も 尾州 朝尺
物ゆかし花散里の機の音 同  三和
天人と否ぬはかりに雛あそひ 石川 露草
柳から横に切りたりはなれ馬 福島 靡風 
折りからの雲に脚あり蕨とり 仙台 捨意
陽炎や掛違えたる若眼鏡 同  為閑
相鎌や盍木に娵の赤つつし 同  白英
たんほほの二代長者はなかり鳧 伊勢小俣 以上
二番子の朝寝ましなへ雉の声 桑折 湖柳
いかのほり昼の銀河と詠たり 同  芝扇
永き日や四十の余まて親かかり 同  蝶翠
棟越すやおきつしら波猫の恋 同  布川
打水のタくれないや赤つゝし 増田 淇竹
山猿の華盗人をおとしけり 保原 乙十
草の戸や流の先の蕗の薹 同  歌苗
行春の後すかたやふちの花 京  吾仲
しら壁の月夜もありて梅の花 尾州 風尚
湯豆腐は白き凡夫のねはん哉 同  和雪
鶯も物見に出たり岡の松 同  誰也
勤学の窓に朱筆や赤躑躅 谷地 鹽車
蕗の塔世を非に見たる匂ひあり 本宮 盲亀
枝に釣る干葉もおかし軒の梅 保原 雫?
たましゐの土に幾つそ蕗のたう 同  阿水
世に出る田螺の智恵ハなかりけり 桑折 飛雲
山彦にかほ振立る雉子かな 同  梅雫
かけことに娵の影さす茶摘かな 同  ト端
子をほめる親の鼻毛やいかのほり 白川 奚疑
此村も乞食法度やきしの声 同  何一子
帰る雁田打いそけと啼にけり 同  可静
やかましや隠者倒しの花見客 飯坂 可笑
三途川渡る小鮎や料里の間 桑折 徇斎
小さかしき家督見立て接穂かな 同  快遊
からくりの仕舞に落る椿かな 尾州 雪窓
懲めのために是とや雉の声 同  涓流
しら桃の間柄よし畔となり 白川 一戸
夕虹の縄に移るや苗代田 同  里燈
ぬれぬ先こそと咲たり藤の花 保原 隣之
草刈の昼寐をおとせ稚の声 桑折 風走
青柳や三輪素麺の水はなれ 同  柳巴
紙子着て川のたとへや猫の恋 同  柳枝
黒鬼の手にさいなむや雀の子 同  柳葉
青柳の波にさんふと八日かな 福島 下文
おいとしとなま軽薄の柳かな 同  友仙
しら梅は笹の葉越にやせにけり 同  東湖
此道や去年も三つ四つ蕗のたう 同  不中
雛達の余座になをるや江戸双紙 木曽 還珠
ミちのくの木芽日和や三日誉 川俣 和水
襁褓干す隠居子もあり桃の花 同  一川
伽羅を焼綟子の障子や朧月 江戸 露休
桃の日や胡葱の指捨たもの 岩城 芳津
御意見にあやまり入て蛙哉 伊勢 燕説
水さつと茶筅をそゝく柳かな 同 団室
また寒し雨に胡蝶の粘はなれ 尾州 推之
傘の雫も軽し春の雪 大津 正秀
咲花に古ミなきこそ神代なれ    馬耳
2006年02月26日

夏 部
 夏 部

材木に買れて桐の若葉かな 月空 居士
紫陽花の華も尾を出す日照哉 尾州 吟水
置さりや僧都は鳴てほとゝきす 同  林月
五月雨の晴や鶏啼屋根の上 筑前内野 助然
あひたりと薬はきかし芥子の花 伊勢肥柄 紫筍
青柳の分別借るや今年竹 桑折 衣吹
紙楔うつやあふきにー異見 桑折 素柳
高足の鞠か鳴たかほとゝきす 同  古覧
水加減畔から覗く早ゆりかな 同  蝶翠
竹の子や走りかゝつて片手打 尾州 一秀
汗なかす臍から凉し手水鉢 同  里草
白雨や臍?れし其たとへ 同  桃川
ゆすられて落るは梅の若気也 駿州沼津 虎林
姫百合に立や娘の艶くらへ 同  英和
氏神を道から拝む水鶏哉 豊前長浜 方翠 
時鳥啼や爰にも山一重 保原 易耕
三曲の吟か雲井の郭公 同  奇云
初鰹女中なからも上戸客 白川 何一子
鍬の柄の抜て走るや麦鶉 同  百出
菱窓に山見て凉む月夜かな 掛田 苔雫
浮ふ瀬はなしや小茶屋の花葵 鎌田 吟花
冠よりあかの裸のすすみかな 尾州 桜川
手拍子は二階座敷かほとゝきす 同  舟歌
空船をゆすり崩すな行々子 同  焼井
一村の火伏に咲や桐の花 桑折 渭流
骨よハき団扇や人の十五六 同  闘角
鼻へ出す奢そなけれきりの華 同  桜吟
味淡し牡丹になりて小盃 亡人 不碩
凪さふな雲見習んほとゝきす 白石亡人 水音
青梅や鉢にうかるゝ青海波 本宮亡人 万角
出掛りて一里一里のすすみかな 保原 自牛
撫られて眠れ柳の下すすみ 同  鬼角
人並に猫も跡から凉ミかな 増田 運中
卯の花や二日の月は入りなから 尾州 除西
泥に酔ふ鮒のあたまの暑さ哉 同  爽始
散芥子に蝶は手品のなかり鳧 同  千里
後生嘸かたひら軽き世のしまひ 駿州長沢 吟笑
しめ出しの廓に狂ふ蛍かな 福島 靡風 
釣船に酔ふてうつむく緋ゆり哉 同  吟鶴
十徳の風流はさもあわ桐の花 桑折 ?走
木枕を割て御ための蚊やりかな 同  卜端
やかましき市に馴てや行々子 同  桐子
ふらふらの蓮の蛙や楽坊主 江戸 錬石
子を寐せてほかりほかりの蚊やり哉 飯坂 莚鐘 
もみ瓜や酢い中となる茄子漬 同  不珍
夏菊や此時ほしき秋の風 尾州 風野
はり肘て松は暑さをこらへ鳧 桑折 一水
白無垢や垢も一しほ花卯木 同  梅雫
硝子の鷺を放さんかきつはた 同  波燕
夏の夜は虱狩間に明にけり 同  淇風
色々の声色似せて凉かな 同  緑水
気抜した人のたとへや氷餅 保原 歌橋 
一くもりさそふ麓のしミつかな 福島 志中
彼鳥の糞も尋んきりの華 同  和石
葩て飛蚤や日和の三世相 桑折 乙角
凌霄や千疋猿の梢より 同  如?
水茶屋や椽の下より杜若 同  柳縁
青梅の祖父と呼れん今年から 同  梅人
気違をおひき出すや行々子 同  不?
穢多村の聟入はやせ行々子 白川 四夕
楫音をしつめて風の幟かな 須賀川 晋流 
階子からー瀧見たるあやめかな 岩城 沾薄
東路やあやめの台に松露籠 同  右巴
薬日や蓬五葉の伊吹山 同  昨非
君か手に鶉となりて粽かな 同  沾梅
染鍔の厨子に輝くあやめかな 同  沾荷
2006年02月26日

秋部
 秋部

散りて猶柳はかりは柳かな 松山 秋慰子
秋寒し我咲きさそふ鳩の声 江戸 衰枚
女郎花例の旅寐やかゝ見山 大坂 野坡
八朔や世は焼米の華さかり 伊勢 燕説
朝顔の花に虚言つく色ハなし 同  草風
名月やそつとする程女中船 江戸 関柳
名月や小袖のすミ絵須磨明石 播磨龍野 紫々
うミ柿のとふらひもろし秋の蝶 尾州 斗曲
組留て火てよく見れハ尾華哉 同  兀山
民を啼け清涼殿のきりきりす 同  亀洞
はつ秋や水にたゝよふところてん 大津 寸陀
送り火の消て行衛や松の風 同  松琵
山寺に猿も手を振燈炉かな 豊後日田 野紅
まつ風を丸めて遠し鹿の声 同  りん女
歌によむ雁や店てハ五年もの 同  朱拙
河鹿鳴一本橋や流沙川 桑折 素弦
いか栗のかえり礫そおかしけれ 同  闘角
朝顔に四角な垣そつたなけれ 万正寺 坂凩
逢恋と星にそなヘて笑ひ鳧 駿州島田 如舟
へつらひの色は頼まし花すすき 肥後小国  西東
菊畑の悪魔おとしや鶏頭花 伊勢一ノ瀬 雨亨
鼻ひるか但し鼾のきりきりす 同  吟夕
釣鐘に挑灯か出てすまひ哉 飯坂 海尺 
赤とんほ其赤の字て秋暑し 中野 花柳
木を一目やしろー目や啄木鳥 桑折 衣吹
くりからのきほひや松の蔦紅葉 同  古覧
山里やいか栗の降夜半もあり 同  竹雫
蓼酢の場のかれて鮎は落にけり 増田 淇竹
二君にハつかへまいとや菊の華 尾州 調千
立鶉とめん式部か歌もなし 同  弓丁
身に付ぬ洗濯夜着や鴫の声 同  水朋
子の親と呼はれて若し葉鶏頭 江戸 芦人
そら焼を余所へハやらし星迎ひ 筑前内野 きく女
道者待小屋の鏡や日向草 仙台 且柳
洗足を捨て啼せんきりきりす 同  勇徳
此年の耳にも入るや鹿の声 山形 幽窓
稲刈にたはこのめとや鳴うつら 瀬上 等舟
蘭の花咲て鷺まつ気色あり 同  理石
馬鹿も世にあふや昼寐の長瓠 桑折 交隣
玉の緒よ蕣の葉の痩かけん 同  桜吟
朝起きを啼くやうつらの気逸物 同  徇斎
茸狩の猿手やけふの一の人 伊勢小俣 石露
とんほうの山道形にうねりけり 美濃 水尺
さらはさらはやかて参らん盆の中 保原亡人 桃里
名月や大筈者の夜明まて 同  乙十
人買のまねく一もと薄かな 尾州 万声
つれて退く思案はなひか男星 同  心囿
細工絵の筆を捨たりけふの月  桑折 白桃
山鴫や霧を吐出す夕けしき 同  布川
桐の葉の落ちて見せたり窓の月 瀬上 義隣
分別の上から見えぬ西瓜かな 美濃 葉三
ねらい人の一本かつく鶉かな 川俣 温月
這過て余所て年寄ふくへかな 同  指馬
寐て太る七月腹の冬瓜かな 白川 淡負
肘はるやされハ小庭の梅嫌 同  竹陰
夜すまふやあの鉢巻はお寺様 桑折 槽角
先陣は徒跣さふなり茸取 同  岐山
星合やさゝんさ受て笏拍子 岩城 昨非
裄丈の女針男針や星儲 同  樗声
星合の竹のよ幾世竹瓦 同  鼠文
名月の敷寐や玉の拭ひ椽 岩城 由之
星合や高宮の里つま迎    露沾子
七夕に鱠の系も借しにけり 江戸 うの女
猩々のなミたもろさや柚の匂ひ 尾州 林子
医者の手を放れて今朝の一は哉 同  素人
其身その儘て野菊は節供かな 同  永蟲
鵙啼や野けに近き瓦やね 備中倉敷 蓑里
秋のかけちらりと寒しぬり折敷 長崎 宇鹿
2006年02月26日

冬 部
 冬 部

平蔵か歌の名残やかえり花 江戸 桃鄰
寒念仏茶漬の沙娑に居り鳧 尾州 十竹
なしむほと寒き詠めや雪の花 同  羽重
炉ひらきや去た女房の含状 伊勢一ノ瀬 梅凡
四海浪しつかにお寐れ玉子酒 大磯鴫立沢 朱人
寒念仏酒に酔ふたも哀なり 桑折 湖柳
冬枯や山葵おろしの裏おもて 須賀川 晋流
宵やミを松はしくれて返しけり 大坂 芙雀
木曽殿はいかに野も雪山も雪 筑波 立柳
此橋や沖に一すし時雨雲 豊後宇佐 吾竹
八卦見て通れ雪吹の落し穴 保原 易耕 
島一つ絵書あますや村しくれ 同  奇云
初雪や上戸の鼻の上ぬめり 同  可松
髪置や松脂くさし二葉より 江戸 瓢琴 
一くもりよりやり過しけり大根引 同  関柳
年忘下駄はき替て行もあり 山形 康瓠
これものて落葉にひすむ餌さし哉 仙台 拾意
はふて越す橋の細さやむらしくれ 伊勢村松 茂枝
枇杷咲や村に指折こくそ組 同  小俣
かた衣にむ仏事の帆を揚に鳧 同一ノ瀬 浮翠
麦まきの縄にかゝるやにこり酒 同  二鶏
手鼻かむ鼻の見事や大根引 同  拳石
節季候に子か寐て居ると侘にけり 飯坂 海尺
八景に一ノおくや今朝の雪 川又 慰言
寒菊は鉢の留主して肥にけり 川俣 枸月
かたきにも味は知らせし鰒汁 同  浅口
2006年02月26日

病 中 吟
  病 中 吟

櫛のはも荊に乾くしくれ哉 須賀川 楠女
生姜湯や時雨か朝の七つ起 駿州島田 如翠
茶の花か沈香も焼かす屁もこかす 桑折 素弦
庭鳥や垣根にかゝる雪気しき 同  東舟
紙子着て故郷見たかるてつち哉 同  快遊
鍋壱つ持や浮世の年のくれ 同  翠條
凩を笑ひかえすや冬牡丹 同  柳枝
冬至から手に胼の紺屋かな 同  乙峰
物申は床しこハしや年の暮 同  ?之
胼の祖師と仰かん此親に 同  受月
行く行くは虹の根まても枯野かな 同  紅玉
蛸買ふて行はさもしや鉢扣 同  波燕
木枯や痩子ハ勢ハる食時分 同  狐村
執心の落葉に爪や蝉のから 同  素柳
君かためまっ荒0させん鰒汁 同  飛雲
口過の猿に撞木や寒念仏 桑折 白桃
初雪に名のなき山も見られけり 同  渭流
胼や人面瘡の業のほと 同  柳巴
はつんたりいぬるにとうと大根引 同  芝扇
紙子着て我も押れん奥の市 同  馬耳
鰒汁に朝比奈ハなき世也けり 福島 傾枝
行年や半元服の孫もあり 瀬上 嘉峰
雪に鷺やせた詩人の悟り所 同  松岩
空焼の京を目下に紙子夜着    月空居土
撫切やけふは落葉のくらふ山 尾州 汪沖
何人の封し込てや冬の梅 同  之由
かき寄て雪を申や寒念仏 同  遊竹
あてかふて咲や小春の帰り花 同  三父
法界の我や捨子の衣配り 同  瓢風
痩薮や唐の匂ひの石蕗の花 同  風埃
凩のからし尽して垣根かな 同  莞尓
初雪を匂た消すや梅の華 同  立枝
いろいろの骨折甲斐も落葉かな 同  楚山
牢人の身や弓腰て蕪引 尾州 椿又
水に降雪や悟らハ無別法 同  藤乃
経にある三世の縁やかへり花 同  白雲
松杉に真のしくれと降にけり 美作津山 樗羅
はつ雪やけふの薪ハたくハへぬ 江戸 琴風
分別のかたまり寒し年の暮 伊勢桑名 杉長
白毫に蜜柑の照りや雪仏 尾州 可中
冬枯に余情つきてや餅の花 同  風鳥
鉢の器の米をしらけて丸雪哉 同  夕思
関守の寐ぬ夢もあり小夜鵆 同  玉丈
浮雲のさす手ひく手に時雨けり 同  栢風
くらかりの声をなしむや年籠 同  杉月
相槌にたゝき出されつ鷦鷯 同  梅思
蓑に襟かけて越路の衣配り 同  推扣
我か袖にくらへて見るや衣配 同  不又
尻を日に当て師走の鯲掘 同  冬卜
虻蜂の責やのかれて冬牡丹 伊賀上野 魚目
餅つきやめてたい顔の二夫婦 同  其水
無心なる雲に性根や初時雨 尾州 里翠
しくるゝや鞘鳴りのして大屋鋪 同  和泉
祐成は蓑着て鶴か岡見かな 同  芦沢
雪の日の手ころ届かね淡路島 同  志柳
行年の御息所や古こよみ 同  甲由
埋ミ火や尼将軍の一思案 同  岐峰
門ちかえせぬ庭鳥やむら時雨 伊勢桑名 仙呂
鮗の鰭してふいこ祭かな 同  楓里
真実を素面て来たり雪見舞 尾州 素行
去るものは日に日に疎し雪仏 同  松波
清明か術もたのまし寒の梅 同  林木
難行の裸身堅し寒のむめ 同  初扱
三箇の庄相違あらすや帰り花 同  氷支
行年の借銭さひや死んた分 伊賀上野 青瓢
冬枯の今ありかたや建長寺 同  沙蟹
死鬮の連衆そろふや鰒汁 尾州 梅之
ぞと書た小町か文字や帰花 同  何楽
七ころひ八起の世とやむらしくれ 同  波夕
から鮭や割木の米の中よりも 尾州 之風 
山茶花の散てましるやさゝれ石 同  随九
こハざれのつもるや雪の五六尺 同  竹為
木殻に雪盛りれたす月夜哉 同  氷工
辻の火の油させとや小夜千鳥 美作津山 遅柳
2006年02月26日


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